渡辺志桜里

渡辺志桜里

1984年東京都生まれ。2015年に東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業後、17年に同大学大学院を修了。代表作として知られるインスタレーション作品《サンルーム》は、渡辺にとって⾝近な遊び場であった皇居から採取された植物、⿂、バクテリアを生育する⽔槽を繋ぎ合わせ、その⽔を循環させることで、人工的な⽣態系を作り出している。作品制作の背景には、生物全体の種の絶滅・保護・排除の関係性、生態系の視点から見た国家という共同体、民俗的慣習や祭事に潜在する自然と人間との営みに対する独自の観察がある。2024年11月6日より資生堂ギャラリーにて個展「宿(しゅく)」を開催。

主な展覧会

  • 2024 / SACS渋谷 / BLUE
  • 2022 / 新宿歌舞伎町能舞台/「とうとうたらりたらりらたらりあがりららりとう」展 (キュレーション)
  • 2022 / デカメロン歌舞伎町 / 久地良
  • 2021 / WHITEHOUSE / ベベ
  • 2020 / TAV GALLERY / グループ展「ノンヒューマン・コントロール」
  • 2020 / The 5th Floor / 渡邊慎二郎との2人展「Dyadic Stem」

芸術作品とは、特定の誰かに所有されるものではない。それは利潤を生み出す商品とは異なる公共的な存在であり、マーケットの論理では支えられない特殊な経済活動である。このことを自覚的にプロジェクト化したLadder Projectのコンセプトに全面的に賛同し審査に参加しました。
今回選出された渡辺志桜里は、人間社会の論理によって生物環境が管理される状況について批評的に言及してきました。つまりその作品は、芸術の経済的・政治的自律性を前提としているといえます。
現在、最も活動が期待される作家の一人であり、時に生態系をそのまま展示室に転送するなど、所有されることに最も遠い活動を行ってきた彼女を、コンセプトにふさわしい象徴的な作家として選出したいと思います。

statement 2024 推薦委員会 藪前知子(東京都現代美術館学芸員)

新たに制作する新作能をベースにした、シングルチャンネルの映像作品を発表します。能舞台は屋外だけでなく屋内の能楽堂となった現代でも必ず舞台上に屋根がありますが、私にとってそれは大きな共同体を彷彿とさせるものです。また、今回は自然と人間、さらに神との関係にまつわるナラティブを提示することで、私たちが未来をどう生きるかの手がかりを探りたいと思っています。コラボレーターとして、能楽師のワキ方として活躍する安田登さんと、シテ方の加藤慎吾さん、そして情報学研究者のドミニク・チェンさんにもご参加いただきました。あわせて、外来種のブルーギルをモチーフにした、《堆肥国家》も展示予定です。

インタビューを見る