玉山拓郎
1990年岐阜県生まれ。東京都在住。 愛知県立芸術大学を経て、2015年に東京藝術大学大学院修了。 身近にあるイメージを参照し生み出された家具や日用品のようなオブジェクト、室内空間をモチーフに、鮮やかな照明や音響を組み合わせたインスタレーションを制作。 最小限の方法で空間を異化、あるいは自然の理を強調することで、鑑賞者の身体感覚や知覚へと揺さぶりをかける。
主な展覧会
- 2023 / ANOMALY / Something Black
- 2022 -2023 / 森美術館 / 六本木クロッシング2022展:往来オーライ!
- 2022 / 国立新美術館 / NACT View 01:玉山拓郎
- 2021 / ANOMALY / 「Anything will slip off / If cut diagonally」
- 2020 / 豊田市美術館 / 「開館25周年記念コレクション展 VISION Part 1 光について / 光をともして」
玉山拓郎はこれまで、日常にある法則や潜在的なイメージから着想を得ながら、家具やオブジェクト、映像、物質の運動、鮮烈な光や音響を用いたインスタレーションを手掛けてきました。 本作《Models (Pair, 6 sets, 12 rings)》は、交差する二つの輪によって構成され、無限を意味する∞のように、ウロボロスの輪や太極図のような、終わりのないエネルギーの循環を想起させます。そして、このオブジェクトのコンポジションは、時計の1メモリ(分もしくは秒)である6度を基準に構成されています。終わりのないエネルギーの循環と時の流れが交差するように構成されたインスタレーションは、そこに流れる音楽、観客によって持ち込まれた雑音などの環境と呼応しながら光を明滅させていきます。
statement 山峰潤也 氏
Models (Pair, 6 sets, 12 rings)
2023
LED、カラーフィルター、ステンレスに焼き付け塗装、
スピーカー、マイク、6chサウンド
制作:seventh-code株式会社、Artifact
展示設計・施工:NEW DOMAIN
協力:ANOMALY
2つでワンセットの直径2mのリング型の立体物が6セット、計12個宙に浮いているようなイメージが象徴的な作品です。京都・四条木屋町の〈Bijuu〉というホテルの2階、元はレストランだった場所での展示は、コンクリート打ちっぱなしの壁に剥がされっぱなしの天井、古びた木の床……とホワイトキューブとは似ても似つかない環境なんですが、個人的にはそうした空間に散りばめられた“ノイズ”こそが面白いなと感じています。
また光に関しては初めての試みもあります。僕の代表的な作品に、蛍光灯を使った《Static Lights》というシリーズがあり、敬愛するルイス・カーン(*4)という建築家が、蛍光灯を“静的な光”と称して嫌っていたことに着想を得たシリーズで、彼の考え方は電気によって育まれる光は全く動きのないものであるというものなのですが、僕は逆に、ならば変化のない静かな光である蛍光灯が、空間に対して何を起こしてくれるのか、どんな作用を起こすのかを知りたいなと考え、始めたものです。一方で今回使っているのは、静的な光ではなく動きがある自然の光。それは初めてのアプローチなんです。光がただそこにあるだけで何かが起こるか、ではなく、作品が自発的に動き出すとどうなるのか。新作を通じて考えてみたいです。
写真: Courtesy of ACK, photo by Yoshimi Ryo
映像: Courtesy of Daimaru matsuzakaya, movie by Naoki Miyashita